犬の顔にデキモノができたのがキッカケで治療や注射で月に何回か歩いて20分の動物病院に通うようになった。
設備は整っているし、獣医さんも懇切丁寧な診察・治療をしてくれるので安心して任せられる。「療浴」と称するシャンプーで長時間預けるときは、飼い主も近くの店でコーヒーブレークで息抜きができるのがありがたい。
待合室も清潔で明るいのは快適なのだが、問題はそこにいる変わった人たちなのである。
「まぁ!変わった顔のブルドックねぇ〜」
と、さも珍獣でも発見したかのように大声を出すオバサンなどは序の口である。
そんなときは、作り笑いをしながらも内心では「あのねぇ〜、これはパグ犬なの。犬を飼ってるくせして、そんなことも知らないの」と悪態をつけばいい。
にしても「変わった顔」なんて人間の子に言ったら親の手前、問題アリだと思うけど。
変わっているといえば、犬猫病気オタクのようなオジサンがいる。とにかく犬猫の病気については、やたらに詳しいのだ。で、はじめのうちこそ愛犬のためにと感心しながら頷いて聞いていたが、口角泡を飛ばして延々とやられると飽き飽きしてアクビを我慢しながらも眠くなる。これは苦痛以外のなにものでもない。
それでも、オジサンは反面では待合室が混んで坐る席がなくなると見ると、スッと立って外に消える。いつもはオシャベリなのに黙って小さな親切を実行する奥床しさももっているのだ。
女性で変わっているといえば、あたふたと待合室に飛び込んできたかと思うと、小型犬を入れたカゴを隅っこに置き、受付の女性に「ちょっと、お願いね」と外の飛び出す小太りのオバサン。
オバサンは診察の順番の頃を見計らったように、「ハア、ハア」と肩で息をしながら汗だくで戻ってくる。
様子からして犬の診察の順番が来るまでジョギングでもしているのだろうか?
他人事ながら、こんなことしてると犬よりオバサンの健康の方が心配になる。
変わっている人の極めつけは体中をギンギラギンに飾り立てているオジサンである。
指にはピッカピカのリングが並び、セカンドバッグなどの身の回りは有名ブランド品で固めている。それなのに、着ているのはジャージの上下に足下はサンダル。つい先日はそのカッコウにブランド品の大型スーツケースを待合室に持ち込んでいた。どう見てもアンバランスで、これから海外へというようには見えない。
しかし、変わっているのはオジサンの風体ではなく、患者を連れている姿を見ていないことだ。
受付嬢と、
「お陰で通じがよくなってね」
「それはよかったですね。ハイ、1週間分のおクスリです。お大事に」
とやり取りしているところからすると、確かに患者はどこかにいるのだろうが、一度も見かけないのがフに落ちない。まさか、犬猫にかこつけて自分がクスリを服用しているわけでもあるまいに。
いろいろと推理した挙句、患者は自宅療養中という結論に達したのだった。
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