住んでいるマンションの周辺をグルリと歩いていると、いろいろな趣味人に出会う。
その代表格がガーデニングや盆栽いじりだ。庭先で季節の花々を育てて慈しんでいる人や丹精しているサツキの盆栽にウットリとしている人を見かけると、優雅な趣味だなぁと、立ち止まって眺めてしまう。
なかには「ちょっと見ていきませんか」と誘う盆栽オジさんもいるが、「いえ、あのアタシ素人なもんで」と、たじたじとなって引いてしまう。「この枝ぶりは…」などと講釈されても分かるはずがないものね。
つぎに目につくのがウォーキングをしている人たちだ。
昼からウォーキングに汗しているのは中高年が圧倒的に多い。顔はシッカリと正面を見据え、腕を上下にフリフリ、速足で歩いているのはオバさんたちである。
いかにも健康増進のためという感じで自信に溢れている。そんなにムキにならなくてもと意地悪な気持ちになることもあるが、それは横着者のヒガミというものだろう。
わが街自慢の都内で唯一の水郷のある公園では絵を描いている人もチラホラと見かける。休日にはオジサン、オバさんの絵描きツアーの団体(?)が出現する。ちょっと覗こうとすると、「ダメッ」と体で隠してしまうオバさんもいるが、大方は「どうぞ、ご自由に」という風情だ。こういうのを日曜画家というのだろうが、なかには玄人はだしの細密な点描画を描いている年配者もいて、その周りには人垣ができていた。なかには「発表しないのは宝の持ち腐れで惜しい。個展を開いたらいい」と主張するオジさんもいたりした。
アウトドア派の定番と言えば釣り人だ。
釣り人には都内でも有数の釣り場として知られるから無理もない。近くには数軒の釣具屋があり、木船も貸している。
寒い日には防寒着にミニテントを張っている人を見かけ、まるで氷をクリ抜いてワカサギでも釣っているのかと錯覚した。水郷の近くの小さな掘にも釣り人がいる。こちらは小さなクチボソを釣っているのだが、最近はギャルやオバさんの姿も見かける。若い女の子が、
「アカムシとネリじゃぁ、どっちがいいの?」とオジさんに訊いているところをみると相当のオヤジギャルだが、缶ビールを飲みながら釣り糸を垂れているオバさんには、しばし呆然とした。
街で出会う趣味人と言えばアウトドア派だけではない。
その釣り場の近くの家の庭に建ったプレハブからは昼から大音響のカラオケの歌声が聴こえてくるのだ。曲が演歌の懐メロからして歌っているのは中高年と察しがつく。
深夜なら迷惑もいいところだろうが、午後のひと時のことだから、近所も大目に見ているか、近所でツルんでカラオケ大会をしているのかもしれない。
カラオケが趣味と言えば、小型カセットで曲を流し、歌いながら公園を散歩しているオジさんを見かけたことがある。
上手いとは言えない。ハッキリ言うと擦れ違いざまに「カーン」と鐘ひとつ鳴らしたいくらいに下手クソそのもの。
でも本人は恍惚として歌っているのだ。趣味は?と訊かれても「飲酒です」としか答えられない我が身よりは、はるかに優雅なのだった。
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