東京から今住む静岡に引っ越して、1年が経ちました。
現在主婦となり、家業を手伝いながらのんびりとスローライフを送って
います。
東京での生活はひどく殺伐としたものでした。毎日仕事に追われ、寝に
帰るだけのアパート、もちろん隣近所にはどんな人がいるのか解らな
い。夜も鳴り止まないパトーカーや救急車の音。アスファルトだらけの
地面。プランターに植えられた花や植物。眠らないネオン。その明かり
が温もりのように思って生活してきました。
環境が変わって、あんなにも当たり前だと思っていた生活環境が、今ひ
どく冷たいことに感じます。今、ここでは今まで味わったことのないよ
うな地域の結びつきや温かさを、肌で感じることができています。よう
やく大地に足をついたような気さえしています。
近くにある農業高校の学生が、私に人との関わりや、地域との関わりを
見直すきっかけ与えてくれました。登下校中の彼らは普通の今時の高校
生だけど、彼らは休みの日も花に水をやり、野菜に肥料を与え、動物の
世話をし、とても良い表情をしていました。
それは私が生まれて始めて目にする光景でした。『野菜はいかがですか
〜?花はいかがですか〜?』と響く声が聞こえます。近くにある農業高
校の学生の声です。高校生達が作業着を着て、リアカーを引いていま
す。彼らは自分達で作った野菜や花を、リアカーに乗せて売りにくるの
です。それを地域の住民が買います。
遠くから『買うよ〜!!』と言うおばあちゃんの声を聞き、そのおばあ
ちゃんの元へ高校生達は元気よく走ってリアカーを引きます。買い物中
は話にも花が咲き、おばあちゃんも抱っこされたお孫さんも笑顔です。
買ってもらったことを感謝する高校生達の『ありがとうございました!!
またお願いします!』の声はとても爽やかです。挨拶も礼儀正しく、
一生懸命な彼らを、地域社会は温かく包んでいるのです。
野菜も決して品数か豊富ではないし、もちろんスーパーで買うより見劣
りするし、安く売られています。彼らは手間隙かけて大事に育てた野菜
や花を売ることで、達成感や感謝の気持ちを学んでいるのでしょう。そ
して住民達は彼らから微笑みと温かさをもらい、『頑張ってね。』と彼
らを支えているのです。ただ物を売り買いするだけの行程に、こんな温
かさがあるんものかと私は感激しました。この地域で育つ子供達も、き
っとこの光景とともに成長し、温かい地域を創る担い手になって行くの
でしょう。
私は、近隣で会う方々と必ず挨拶を交わすようになりました。何かしら
の形で地域社会を支えていきたいと思うことができました。高校生達に
感謝しています。
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