「お母さん、今日の魚には骨があるの?」「骨がないなら食べるよ」横浜市の主婦、木村和美さん(35)は、食卓に魚を並べるたび、七歳と十歳の子どもたちとこんな会話をするようになった。(中略)「子どもたち二人とも、魚があまり好きではなく、その原因の一つが骨だった。骨のない魚なら食べてくれると思って買った」と和美さん。(中略)
骨なし魚は、実は和美さんにとっても助かる。「下処理もいらず、内臓などのゴミも出ない。子どものためにわざわざ骨を取り除かなくてもいいから手間が省けて便利」とうち明ける。(中略)
骨のない魚は、加工工場で身を三枚におろし、一匹ずつ手作業で骨をすべて抜き出す作業を経てできあがり、冷凍で流通する。(中略)加工の手間はかかるが、価格は骨のついたままの冷凍の魚とあまり変わらない。(中略)
冷凍食品加工会社の大冷(東京・中央)は、一九八二年に病院や高齢施設向けとして発売したが、このところ、家庭や学校給食向けの需要も急増。(中略)
子どもたちは歓迎しているが、大人たちの反応はやや異なる。大冷の後藤健一常務は「日本の食文化を壊していると批判されることもあり複雑な心境」と打ち明ける。(後略)