長男の沙羅(8)は僕が出ているドラマを見るとき「今日はどんな役?」と必ず聞いてくる。そして僕が犯人役のときは、決してテレビを見ようとしない。虚構の世界でも悪い父親を見るのはショックのようで、なんだかいじらしい。(中略)
「子供ができたみたい」と彼女から告げられたのは僕が十八の時。当時僕は、子役から本格的な芸能活動を始めようとしていたところだった。(中略
女と正式に結婚し、世間に公表できた時はほっとした。でも、親子で暮らせるようになってからも戸惑いはあった。溝を作っていたのは僕の方だった。(中略)
父親としての自分に自信がもてなかった僕を変えたのは、突然の非常事態だった。(中略)
それ以来無理して父親ぶることはしない。面倒はみるけど一緒に遊ばないというのが僕の主義。遊びでも子ども相手だからと手加減して負けたふりをするのは、うそっぽくて嫌。(中略)小学生までは問題児で構わないというのも持論だ。
子どもを完全にコントロールするのは無理。「お前のこと信頼しているよ」ときちんと伝えれば、子どもはそれに答えてくれるはず。男親の"本番"を前にそんな気がしている。(後略)