「ほんものの食材を使わなくても〜」と書き出すと、なにか大変なものを食べさせられるのではと誤解を受けそうですが、ちゃんと食べられる食材を使っていますので、どうぞご安心ください。
テレビの節約生活番組などで、激安食材を使ったレシピや、余りものを別の料理に変身させる方法を紹介されていますが、私が今回書かせていただくのは、いまから20年近く前、実際に行っていたアイディア料理です。バツイチになった私ですが、きびしい姑さんに仕えたおかげで、料理をつくる楽しみを覚えることができました。それが、ひとり暮らしになったいまでも、生かされています。
嫁ぎ先は山村の農家でした。ふだんから買出しに行くことは、年老いて車の免許を持たない舅、姑にとっては大変なものだったようです。そのため、自分で育てた野菜や、日持ちする乾物類、行商のおじさんから丸ごと購入する魚がメインの食卓になっていました。毎日の食卓に卵があるのが定番と思っていた私ですが、仮に、卵がなくても生活ができることも納得できました。
さて、料理経験がないに等しかった私が、姑のアイディアにヒントを得て、実際につくった料理を紹介させていただきます。分量などは、家族構成によって違ってきますので、料理の内容だけを紹介します。
<ちくわの蒲焼> |
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ちょっと太めのちくわを2つに切って、それを半分に開く |
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中の白い部分を上にして、本物の魚のように切り目を入れる |
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両面をフライパンで焼いて、お皿に盛り付ける |
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その上に、しょうゆをかけると、うなぎの蒲焼そっくりになる |
<高野とうふのから揚げ> |
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高野とうふをお湯でもどす |
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それを拍子木のように、直方体に切る |
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から揚げ粉をつけて揚げると、とりのから揚げの食感になる |
<すき焼きのちらし寿司> |
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すき焼きの残りを細かく刻む |
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ご飯にすし酢(合わせ酢)を入れて混ぜる |
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できあがったすし飯に細かく切ったすき焼きの具財を混ぜる |
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薄焼き卵や、細切りの紅しょうが、山椒などを乗せて完成 |
実家と嫁ぎ先の根本的な違いは、おかずを大きい鍋で何日分もまとめてつくることでした。1度食卓に上がったものを次回も食べるなど、当時の私には考えられないことでした。しかし、次回の食卓も同じものといっても、まったく同じものではなく、いろいろと手を加えてバリエーションを出していたのが、姑の偉大なところでした。
たとえば、残った食材をかたくり粉でとろみをつけて炊きなおすとか、小麦粉をつけて焼くとか、いろいろ工夫をして食材を無駄にしないで最後まで使いきることを徹底していました。
お正月のごちそうが一段落したころ、棚の奥に忘れていた調理済みの魚にかびが生えていました。それに気づいたときの姑の慌てようには、こちらも驚きました。気性が激しい姑でしたが、食べ物を粗末にしたことを気難しい舅(自分の夫)に知られたくない気持ちが、ありありと伝わってきたのです。
その後、いろいろなことがあって、あの家とは生涯に渡る縁がなかった私ですが、食生活の大切さ、料理の楽しみ方を教えてくれた姑には感謝しています。
そして、姑が真っ青になるくらいの超・節約料理を楽しむ私です。 |