先日、書店でふと興味を引かれて購入したのが、「おかあさまのためのコーチング」(あべまさい著、ディスカヴァー刊)という本。
「コーチング」についての知識はほとんどないのですが、抽象論に流れがちな子育て本の中にあって、適度に具体的な考え方やテクニックが盛り込まれた内容が新鮮で、楽しく読むことができました。
著者はコーチを仕事としている会社員であるとともに、子育て中の母親でもあるという方。
自身の子育て経験の中で起こったさまざまな出来事(失敗談も含めて)を振り返りながら、コーチングの考え方やその活用法などを、親しみやすい口調で説明しています。
ところで、コーチングってなんでしょう?
著者によると、コーチングとは
『相手の自発的な行動を促すコミュニケーションのスキル』
のことだそうで、とくにスポーツやビジネスの場面で活用されているものです。
上から下への一方的な指示や命令でなく、相手に質問を投げかけたりすることで相手自身から答えを引き出し、今度はそれに対して提案をする・・というように、双方向のコミュニケーションを続けていく中で相手の能力を引き出していくという考え方のようです。
そうであれば、たしかに子育てにも使えそう。
ともすると、「○○しなさい!」「それは、駄目でしょ!」と指示や命令ばかりになってしまいがちな、わが家の子育て。できるだけ怒らないで子育てしたい・・と思いつつも、わけも分からず大泣きされたり、まったく言うことをきかない子どもを目の前にすると、なかなか難しいものです。
そんなとき、この本で紹介されているようなコーチングの考え方を取り入れてみると、子どもの気持ちやどう関わればいいかというヒントが、少し見えてくるような気がします。
本の中で、とくに印象に残ったのは、次のような言葉です。
☆『相手から帰ってきたコミュニケーションは、自分が相手に伝えたコミュニケーションの結果である』 |
この言葉は、本当に実感を持って読みました。子どもが何で怒ってるのか分からない、ということが時々あるのですが、もしかしたらこちらの働きかけになにか原因が隠れていることもあるのでは、と気づきました。
子育ての場面だけでなく、夫婦間や職場など、いろいろな場面で思い当たることがあります。 |
☆『子どもが語りかけてくることは、いっしょにここに来て、いっしょにこの世界を味わえということに尽きる・・(中略)・・親がいっしょにそこまで行くことは、子どもにとって大きな大きなアクノレッジメントなのだと・・』 |
アクノレッジメントとは直訳すれば「承認」です。子どもの呼びかけに応じて同じ世界に身を置くことが、子どもを認めることになり、そのことが子どもに喜びと自信を与えるということのようです。
親も心から楽しみながら一緒に遊ぶ、というような何気ないことが、子どもにとってはとても大きなことなのかもしれません。 |
☆『それはできない、それはよくない、という事実の壁はある。(中略)事実の壁の上に私が乗ってさらに壁を高くするのか、壁の手前にいる子どもの隣にいるのか』 |
うちの子は、できないことがあるとカンシャクを起こします。そんなとき「泣いたって駄目なものは駄目!」と怒ってしまうことがあったのですが、その態度は明らかに『壁を高くする』だけのものでした。この言葉を読んで以来、カンシャクを起こした子どもの気持ちにできるだけ寄りそって静かにさとすように努力しています。 |
もちろん、現実の子育ては決してパターンどおりにはいきません。
ですから、ここで紹介されているようなコーチングのスキルが思うように活用できるかどうかは、正直、わかりません。
それでも、親としては、子どもの可能性を最大限に伸ばしてあげたいもの。
コーチングの考え方に触れることで、子どもが自分から行動を起こすサポートができたとしたら、これほどうれしいことはありません。
目指すは、子どもにとっての"名コーチ"です! |