5年前、私が「危険物取扱責任者試験」(以下、危険物)を受けるきっかけとなったのは、その道で仕事をしている人に叱られそうなほど不純な動機でした。
試験の情報は、その年の春、市の広報誌で知りました。ほんとうは、そこに記載されている「調理師免許」を取りたかったのですが、受験資格のなかに、調理現場で働いた経験がある人という主旨のものがありました。
以前、福祉作業所でクッキーづくりの仕事をしたこともありましたが、たしか「2年以上」という受験資格には及びませんでした。もし、縁故を頼りに証明書を書いてもらっても、なんらかの機会でばれてしまえば、当然、資格は取り消しになります。というよりも、そんな小細工はしたくなかったのです。泣く泣く調理師の受験をあきらめました。
そして、そのとき同じ広報誌に載っていたのが、「危険物」です。私は、調理師を受けられない「はらいせ?」にと、無謀にもその資格試験を受ける決意をしたのです。そして、窓口となっている消防署へ電話をしました。
危険物の資格にはいろいろ種類がありますが、私は「一番簡単なもので結構です」と言いました。すると、担当職員から「乙類4種」(以下、乙4)の受験が一番多いのでと、それを勧められました。そして、書類を取寄せ、写真と受験料を添えて、消防署の窓口へ行ったのでした。
ここで、危険物の種類や試験について、おおざっぱに分けて掲載します。
<種類・取扱い対象> |
乙類1種 酸化性固体(塩素酸塩類、過塩素酸塩類など) |
乙類2種 可燃性固体(硫化りん、赤りん、硫黄など) |
乙類3種 自然発火性物質及び禁水性物質(カリウム、黄りんなど) |
乙類4種 引火性液体(ガソリン、石油、軽油など) |
乙類5種 自己反応性物質(有機過酸化物、ニトロ化合物など) |
乙類6種 酸化性液体(過酸化水素、硝酸など) |
丙 種 ガソリン、石油、軽油など |
★乙類は、取扱作業への立会いができるが、丙種はできない |
<試験実施>H県の場合 同じ日に3種類が行われた(平成13年度) |
乙種1、2、3、5、6類 |
乙種4類 |
丙種 |
<受験料> |
乙種 3,400円 |
丙種 2,700円 |
こうして書き並べているだけでも、頭が痛くなる内容ですが、私が受けることになった乙4は、ガソリンスタンドで働くのに必要で、一般的な資格だということはわかっていただけると思います。
この上に「甲種」というのがあるのですが、これは、実務経験が必要だというほか、いろいろ規制があり、誰にでも受けることはできないものらしいです。
消防署の窓口で受験の申し込みをした私は、たしか、その場でテキストを購入しました。また、試験前に3日間の集中講義があると聞き、その申し込みもしました。書店へ行けばいろいろな種類の本もありますし、「願書記入要領」には養成講習案内も載っていましたが、最寄りの消防署で講義を受けることができたのが幸運でした。
しかし、その講習会で初めてテキストを開くようなことでは、「とき既に遅し」です。それまでに自分なりにできるだけのことをしました。もちろん、仕事の合間を縫っての勉強です。乙4の試験内容は次のとおりでした。
<乙種4類の試験内容>筆記試験(択一式) |
1、物理学と化学の基礎知識 10問 |
2、危険物の性質並びにその火災予防および消火の方法 10問 |
3、危険物の関する法令 15問 |
さあ、困ったことになりました。私は進学校ではなかったので、「物理」など高校では勉強していません。また、分厚い「化学」の教科書も半分ほどしか習っていなかったのです。試験は、いずれも「5問択一」ですが、それにしても「あてずっぽう」で通れるほど、世の中あまくありません。
私は、可能な限り体を使って覚え、理解することに努めました。とにかく「書く」「ワープロ(当時)」で入力するなどして、さびついた頭に叩き込むことにしました。そして、過去の試験問題もかたっぱしから入力して、種類別に切り取り、並べ、重複するものは捨てました。そして、それを紙に貼り付け、再び入力するという作業を繰り返し、問題の傾向を絞り込みました。
そのおかげもあり、試験までカウントダウンになった講習会のときには、講義の内容がなんとか理解できるまでになったのです。そして、3日間の講習会で習った内容も、ワープロ入力して編集しなおすなどの作業をしました。
いま、手元に残っている資料は、きれいに入力して整理した資料です。現在は「A4」が主流ですが、当時はまだテキストも自分で作成した資料も「B5」でしたので、時代の流れを感じます。
その甲斐あって、私は、奇蹟的に危険物の試験に合格することができました。しかし、それだけで終わってはいけません。免許の交付を申請しないと資格にはならないのです。そのための手数料として2,800円、配達証明切手代として290円が必要でした。
送られてきた免許状は、運転免許証といっしょに保管しています。これは、たしか10年に1度「更新」が必要です。
「危険物」に合格して「物理」や「化学」が好きになった私は、同年、「毒物劇物取扱責任者」と、なぜか「宅地建物取引主任者」の試験にもチャレンジしましたが、結果は聞かないでください。
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