国家試験をはじめ、さまざまな資格試験は筆記試験だけで済ませるものが多くなりました。
私が受験経験のある「毒物劇物取扱責任者」(毒劇)には実技試験があり、実際の薬品を前にしての判別試験があります。しかし、それを筆記試験、つまり机上の仮想体験で済ませる都道府県も増えてきました。私が受けた県も、本来実技で行うべき分野まで筆記試験でした。
たとえば、「AにBを加えたとき、どんな色の炎がでるか」というもので、その答えを何通りかの回答から選ぶというものです。薬品単体ならなんとかわかりますが、聞いたこともない薬品に、さらに意味不明の薬品を加えるのです。答えは全然わからず、完敗でした。
このように、すべて合理化、簡素化されつつある資格試験ですが、いまも実技を避けて通ることはできないものもあります。私が受験した「保育士試験」もその代表です。試験科目は大きくわけて8科目になりますが、たいてい、科案内の最後に書かれている「保育実技」は、さらに詳しい試験内容にわかれます。その詳細を私が受けた経験をもとに表にして書かせていただきます。なお、私が試験を受けたのはもう30年前のことですが、時代が経っても試験に臨む基本姿勢は変わらないと思います。
<保育実技 詳細> H県 |
筆記試験 |
絵画制作 |
当日、発表されるテーマをもとにして1作品
クレヨン(クレパス)、色紙の使用が可能 |
言 語 |
絵本の読み聞かせを実施 |
リズム |
大人用の振り付け(社交ダンスのステップを取り入れる)
曲は当日発表
曲の長さ、小節数、拍子は事前にわかっていた
子ども向けの振り付け(実際に子どもが踊れるようなもの)
実際の曲が、事前にわかっていた |
声 楽 |
課題曲(事前にわかっていた)
自由曲 |
ピアノ実技 |
課題曲(事前にわかっていた)
自由曲 |
全部で8科目ある筆記試験は、2日間かけて一斉に行われました。そのなかで、この「保育実技」にある「筆記試験」と「絵画制作」も済ませます。
そして、日を改めて、その他の実技試験を行われるのです。試験は、数十人ずつのグループにわけて会場をまわりますので、まるで、地域で「成人病検診」を受けるみたいなものです。
試験は、「リズム」の場合は何人かを1列に並ばせて一斉に行われ、採点されるのですが、その他は当然1人ずつ受けます。受験者は大勢の人数ですので、個人の持ち時間が決められてきます。そうなると、限られた時間が勝負ですので、最初の印象が大切です。あとで、どんなにすばらしい展開が待っていたとしても、最初につまずいてしまったら元も子もありません。
また、声楽、ピアノは、順番待ちをしているときに前の人の演奏が聞こえてきますので、自分の曲を忘れてしまうこともあります。ですから、絶対の自信をもって望めるものがいいでしょう。
私は、言語(絵本の読み聞かせ)は、オリジナルのストーリーをつくって臨みました。そうすれば、間違ってもポーカーフェイスを貫けば、だいじょうぶだと、大胆にもそう思っていたのです。私が試験を受けたのは、まだ、高校3年生のときでしたので、おそらく怖いもの知らずだったのでしょう。
さて、いちばんのネックになるのは、ピアノ実技だという人が多いと思います。後にピアノを専門的に学ぶことになった私ですが、人の演奏を聴く立場になると、最初の数小節だけでその人の演奏技術がわかるものです。
現在の保育現場では、保育士がピアノを弾かなくても、CDに頼ることもできます。また、持ち運びできるキーボード(鍵盤楽器)も、いろいろなバリエーションが増え、調性も指1本で上げ下げできます。(たとえば、ハ長調→ニ長調)そのため、移調奏ができなくても、日々の現場では問題になりません。
それでも、子どもたちは先生の生演奏に触れ、音楽に興味を持つきっかけになることだってあるのです。また、子どもが偶然口ずさんだメロディーを書き止め、曲として完成させるくらいのテクニックも必要だと思うと、ピアノの演奏技術はより高度なものがあったほうがいいに決まっています。
そこで、この夏ピアノの実技試験を受ける人の参考になればと思い、自分や友人の経験を書かせていただきます。
<ピアノ実技を受けるために> |
自分の好きな曲を選ぶこと(自由曲の場合)
弱起(1拍め以外)の曲の出だしに苦労した人もいる |
自分の力の7〜8割程度で弾ける曲を選ぶこと
技術に余裕があっても、いきなり難しい技術から始まる曲は
避けたほうが無難
技術的に余裕がなく、無理して難しい曲を準備して失敗した人もいる
他人と比べる試験ではないのではないので、
とにかく「受かればいい」くらいの気持ちで |
暗譜ができていること
譜面に頼っていると、演奏をするときに
譜面が落ちたり、1段とばしたりするアクシデントもある |
曲の内容を理解できていること
曲の形式 途中で転調するとき、○調から○調に変わるのか |
曲の演奏を楽しめること
簡単な曲でも、堂々と楽しく演奏していれば、
難しい曲を必死で弾くよりもはるかに上手に聞こえる
保育現場にいる人は、実際に子どもの前で弾いている曲を準備して
いた人もいた |
これは、声楽にも通じることです。また、実際に歌うのですから、風邪をひいて高音がでないなど、想定外のハプニングがあり、泣くにも泣けない事態にも発展しますので、体調には十分気をつけてください。
最後になりましたが、みなさんのなかで、ことし保育士の試験を受ける人がおられましたら、ご健闘をお祈りいたします。 |