最近、酔いつぶれる若者がめっきり減った。(中略)飲み方がおとなしくなっただけではない。酒を飲む若者自体も減っている。特に男性は、ほぼ一貫して右肩下がり。酒類メーカーがそれぞれ独自に行っている調査でも、同様の結果が出ている。飲酒頻度の下がる傾向も見えるという。(中略)
酒類メーカーも傍観していたわけではない。例えばキリンビールは、「シャウト」(94年)、「LA2・5」(97〜98年)、「KB」(01年)と立て続けに若者を狙ったビールを発売した、だがことごとく撤退に追い込まれた。(中略)同社の調査では、酒を大人への背伸びアイテムと認識しつつ、必要不可欠とは思っていない、そんな若者の姿が浮かび上がってくる。(中略)
酒のカテゴリーごとの盛衰をみると、若者の酒離れの一側面が浮かびあがる。97年度と02年度を比べ、販売数量が落ちているのは「清酒」「ビール+発泡酒」。逆に「焼酎」「果実酒」「リキュール」は伸びている。おいしさを感じるまでに時間のかかる苦い酒は減り、ジュースの延長で飲める甘い酒が増えた。この傾向は特に20代で顕著だ。(中略)
この現状を踏まえ、各社は「総合酒類メーカー化」を旗印に、チューハイやカクテルなど、甘くアルコール度数低めの「甘低」の酒を次々と世に送り出し、女性の心をつかもうと腐心している。(中略)
そもそも若者の酒離れはなぜ起きたのか。
大きな影響を与えたと考えられるのが、長く続いた不景気だ。(中略)収入が減る一方、携帯電話やインターネット、ゲームなど、娯楽は多様に。酒への出費は減らざるを得ない。ただ、博報堂生活総合研究所の原田曜平研究員は、単純な金銭問題より、彼らの行動様式と価値観の変化を重く見る。
酒の三つの効用を必要としなくなったというのだ。三つとは、(1)仲間との連帯感を深められる(2)自分を忘れてバカになれる(3)ストレスを発散してリフレッシュできる。
(1)は携帯電話やメールの普及で人間関係が広く浅くなったこと、(2)はネット仮想空間の発達で酒の力を借りなくてもバカになれるようになったことが理由という。
(3)は根が深い。酒を飲んで日ごろの溜飲を下げられるのは、経済が右肩上がりの年功序列社会で、今を耐えれば将来は良いことがあると思えたからだ。それがもはや通用しない。(中略)
サントリーRTD事業部の和田龍夫企画部課長は原田説の(3)と同じような見解だか、酒離れの背景に、若者ならではの純粋さも感じている。
「彼らがムチャ飲みして酔っぱらいにならないのは、酔っぱらいをダサいと思っているからです。陰で上司の悪口を言って憂さを晴らすような姿が、目前の障害に正面から向き合わず逃げているように映るのでしょう。彼らなりに逃げないようにしたら、結果的に酒離れになったんじゃないですか」
------------------------------------------(ここまで朝日新聞記事)