夏以降、生活環境が変わって、なかなか本を読む機会がありませんでし
た。
元々本好きな私は、日常的にいつでも手に取れる本を何冊か置いておく
のが常でしたが、今はそれもしなくなってしまっていました。
先週主人が出張で家を留守にして、久しぶりに時間に余裕があったの
で、本を読むことにしました。
いつも好きな作家さんの本を選んで読むことが多くて、山本一力さん、
藤田宜永さん、永井するみさん、東野圭吾さん、真保裕一さんなどの作
品を好んでいます。
その中でも、大好きな柴田よしきさんの「朝顔はまだ咲かない」という
作品を読みました。
高校生だった主人公小夏は、ある日突然いじめにあいます。そこから引
きこもりになって、数年間マンションの一室で外に出るのが怖い対人恐
怖症のようになって過ごします。
物語は、引きこもりになった小夏の心の傷を軸に、友人の秋と共に出会
う謎や不思議を解決していきます。
「いじめ」・・・それはとても理不尽なものでした。ある日突然、それ
はやってきました。昨日までそばにいた人が向こう岸にいる感覚なんだ
と思います。
心の傷によって、自分ではどうにもならない衝動や体調の変化などを味
わいます。
最後になって、やっといじめに至った事の真相がわかるのですが、それ
もとても理不尽な理由からでした。でも、ひどい仕打ちを企んだ相手
は、人を傷付けた事さえ忘れているんですよね。悲しくなりました。
物語が進んでいく内に、心に傷がある小夏だからこそ気付く事が、謎解
きの糸口である事も多く、少しずつ小夏も成長していきます。
その内、小夏は自分から少し踏み出してみようと努力を始めます。上手
くいかないこともあったし、逆にもっと自分が追い込まれていくことも
あります。でも、親友の秋や、気に掛けてくれる友人達の支えによっ
て、諦めずに頑張り続け、少しずつ歩き出します。
最後は完全に引きこもりを解消できるわけではありませんが、読み手が
「がんばれ!応援してるからね!」と激励したくなるような、心安らぐ
ミステリーでした。
物語の中に、印象的な言葉がありました。
ある男性が女性に「君はひまわりみたいだね。」と言いました。女性は
その言葉で男性に心を傾けます。でも、相手は遊びだった・・・・。そ
の女性はその後ひまわり≠自分のシンボルのように男性の前にちら
つかせて付きまとい、やがてストーカーになって行きました。
私はずっと「君はひまわりみたいだね」というのは、女性に対する最高
の褒め言葉だと思っていました。
明るくいつもニコニコ笑っていて、太陽のように周りを照らす。
今まで私の周りにも、ひまわりのようだと思える素敵な女性がいまし
た。自分は絶対そんな風にはなれないと思っていたから、そんなひまわ
りのような女性が羨ましかったんだと思います。
でも、小夏の親友の秋は「君はひまわりみたいだ≠ニ言われてもうれ
しくない」と言います。ひまわりって、太陽の方しか見れずに、自分の
意志と関係なしに相手次第でそっちを向く・・・・
確かに、そう言われてみればその通りだと思いました。
言葉には多彩な意味合いがあります。同じひとつの言葉でも、口調やイ
ントネーションで、その言葉の含む意味は全く違うものになることもあ
ります。
自分が褒めている言葉だと思って投げかけた言葉は、相手もうれしいだ
ろうと思うのは、やはり思い込みなんですよね。
秋も深まり、この頃は段々夜が長くなってきたと、しみじみ感じます。
本を読むことをしばらく忘れていて、今回本を一冊読み終えたとき、と
ても気持ちいい、達成感のようなものがありました。
「時間がない」と読書から遠ざかっていましたが、それはきっと自分の
生活の中に、言葉や文章と向き合う気持ちの余裕がなかったのだと思い
ます。
時間≠ヘ自分で作るものなのだと気付きました。
また前のように、いつも手元に本のある生活に少しでも近付けたらと思
います。
秋の夜長、みなさんはどんな風に過ごしていますか?食欲の秋、芸術の
秋、読書の秋・・・・秋の楽しみ方は色々あります。
また、本にも色んなジャンルがあります。
紅葉狩りに出掛ける場所を探すのもよし。名作といわれる文豪の作品に
触れるのもよし。ドラマ化や映画化されたノベライズ本を読むのもよ
し。歴代の芥川賞作家や直木賞作家の作品にどっぷり浸かるもよし。
是非機会を作ってお気に入りの一冊を見つけてみては如何でしょうか?
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