このところ雑誌やらテレビやら、セレブな人生ていうのを目にします。
お金持ちのお嬢さんや奥さんが着飾って、にっこり笑って着ている物はブランドのナントカ、バックもアクセサリーもぼんぼん出てくる出てくる。
パーティがどうのこうのってほんとに優雅で、節約が常時化しているわたしにとってうらやましい限り。
こんな人生にのっかっているなんて、産まれた頃から苦労一つせず楽しいことばかりが待ち受けていたんだろうな、
我慢することなんて関係ない、好きなもの食べて、着飾って人生楽勝って感じ?と、自分の中のセレブ像って情けないくらい貧困なイメージしかありませんでした。
この本を手に取ったのは題名から。斉藤茂吉と北杜夫。どちらも有名人ですよね。その妻であり、母であり作者の祖母にあたる輝子は猛女と淑女という相反した言葉を冠されている。
どんな人物だったのだろうと気になり思わず読むことにしました。
輝子は浅草の病院長の跡取りとして生をうけました。それこそ大事に大事に育てられた娘さんであったみたいです。
かたや後世に名を残す斉藤茂吉は山形県の片田舎の中堅の農家に産まれて、進学させる余裕がないということで、親戚筋の輝子の家に引き取られ、成績優秀で出来がいいところから輝子の婿養子として入籍したのです。
それも輝子の父親が勝手に決めた結婚。茂吉31歳、輝子18歳。歳の差もさることながら、育ってきた環境が血が違かったためにかなりの摩擦、衝突の生活でした。
そんな二人にも子供が産まれますが子はかすがいというようにはならなかったようです。そして試練が。
建築したばかりの大病院を火事で失い、しかも切れていた火災保険のために保険の補填は適わない。
再建築しようとも精神病院だったために近隣の住民やマスコミから反対をうけたり。そして始まる日本全土を覆う先の戦争。
でも驚かされるのは、お嬢様というイメージでおわらない輝子の行動力、精神力です。逆境を乗り越え、しかもおばあちゃんになってからのほうがよりバイタリティを増してびっくりさせられます。
鬱病になった北杜夫とその妻との海外旅行の話ははちゃめちゃすぎて思わず声に出して笑ってしまいました。
セレブって言葉は、うらやましいような憧れるような聞こえがいい気がしますが、メディアに登場する上では個性というものは何も表現されていませんよね。
当たり前のようですが、お嬢様といえどいろんなタイプがいて、苦労をしてもこんなに強く、鮮烈に生きた人生を歩んだ人もいるんだなと感嘆してしまいました。
お金があろうがなかろうが強いのはやっぱり中身が伴っていたからこそだなあ。
とはいえど、晩年は裕福であるからこそできたことでもあるから、その点はうらやましいですけれど。
でもなかなかこんなおばあちゃんお目にかかれません。
ぜひ気品があって、マイペースで人を巻き込んでいくくらいのありあまるパワーを持つスーパーおばあちゃんと本で出会ってみてください。
コラムに関するご意見・ご感想はこちらへ:info@e-koe.net |