都会で生まれ育った私でしたが、1年前まで地方で暮らしていました。
交通の便は悪く、廃線になる列車・バスがあるようなところです。
1〜2両のディーゼル列車やバスが平均1時間に1本以下で走るため、一家に一台の車ではなく、一人が一台以上の車を保有するのが普通でした。
小さな郵便局とJA以外は数件の個人商店、スーパーや銀行どこに行くにも車で10〜15分かかります。チェーン店などありません。
ところが10年ぶりに、都心に1時間もあれば出られるという便利なところに住むようになりました。。
どこに行くにも車、という生活から、今はそう頻繁ではありませんが、どこに行くにも電車となりました。
10年前と比べ、よくなったなぁと思わされるのは、どの駅構内にもエスカレーター・エレベーターが設置され、スイカなるもので路線に関係なく自動改札を通り、ラッシュ時には座席がなくなり、女性専用車がある、路線によってはTV(?)がついていて、路線案内や遅延情報も見られる…ということです。
また大きな駅になると、改札を抜けなくても食事や買い物ができます。とても便利になったものです。
反面、でも…と、首を傾げたくなる光景にもお目にかかるようになりました。
女性の車内での化粧はずいぶん話題になりましたが、それ以外にも10年前にはあまり見掛けなかったことを目にすることが増えたのです。
化粧だけなら少々見苦しくとも迷惑にはなりませんが、男性も女性も、込み合ってきた電車の中で足を組んだまま座っている、7人掛けのシートに6人あるいは5人+荷物で座り詰めようとしない、込んだ社内で小さい子どもに一席使わせ靴を履いたまま後ろ向き、降りる人を待たずに掻き分けながらの乗車…等々となると、やはり迷惑です。
ひと昔前は、そうした子ども・若者に苦言を呈するのは大人たちでした。が、10年たって昔の若者がその大人になったとき、かれらが率先してマナー違反をしているように思えます。以前は注意をしていた世代の人たちは今や見て見ぬふり、こう多いと確かに言いにくいものです。
けれども、今の子どもたち若者たちはそうした大人の姿を見ています。
一つひとつは小さなことです。前に立った一人か二人がちょっと嫌な思いをするかな…程度かもしれません。
でも、その小さな思いやりが軽んじられてきた結果、全体のマナーの低下に繋がっているように思います。
自分の得にならないのならやらないといった、殺伐とした昨今の世相がこんなところにも反映されているのでしょうか。
たった10年しか離れていなかったのに…と思うと、非常に悲しいものがあります。
マナーや思いやりはむしろ、他人のためにあります。
間接的に自分に返ってくるとはいっても、直接すぐにどうにかなるわけではなく、特に自分の得にはならないのが普通です。
でも、だからこそ大切なのです。
損得の勘定だけで社会は築けません。人と人との繋がりが社会を築いています。損得を抜きにした人と人との繋がりの輪が切れてしまわないよう、小さな思いやり・マナーを取り戻してほしいと、切に願います。
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