秋も深まり、明朝はこの秋一番の冷え込みとの予測でしたが…なるほど、愛猫の「きゃあ」が炊飯ジャーの上に座り込む季節となりました。
(ちょと恥ずかしい名前)
きゃあちゃんの我が家入りから遅れること2年。新人ばあばは、勧められる通所施設を固辞し、整形外科他への通院以外、寝て起きて食べて、テレビ見て…が生活の殆どです。
「自分の能力の維持改善に関心が無いなあ」「食に固執してるっていうか、カロリー消費が少ないのに良く食べるねー」との長女・次女談。あ、長女は保健師看護師資格者。次女は管理栄養士の卵です。
食事を待つ身とすれば、歯がゆいこともあるのでしょう。出されたお茶が冷たい、汁物が欲しい、箸は使えない。
私も一日の計画がそうそう都合通りにいかず、しばしば子どもたちの手を借りますが、彼女らはわざわざ一時帰宅して食事を作り運ぶ手間よりも、長々話を聞かされるのが辛いようです。曰く「ああいう人はお給料貰わないと割に合わないわ」
辛いと言えばもう一つ。「あたしは重たいカップは持てない」「あたしはもっとたっぷりコーヒーが飲みたい」うーん。
電子レンジや押すだけポットの扱いも今や危ないし…水筒やプラカップも扱えないと言うし…と思っていたら、末っ子はこれを聴いてか全国大会のお土産にマグカップを買ってきて「ちょっと重いかもしれないけど可愛いから使って」ってさっ。
それからは、持てるほどに冷ましたコーヒーが半量入ったマグカップを大事そうに抱えてますわ。ナイス!末っ子長男。
当初はこれくらいで参ってちゃと深呼吸で色々やり過ごしていましたが、最近は「あたし」の‘あ’の音が発せられるのも少し怖くなってきました。
いや「怖い」っていうのとはまた違うかな。すっかり縮まって140cmぽっちの婆さん一人に翻弄されてる私自身がバカみたいで、喘息の小発作おこしそうなのです。
私は一見頑丈で鈍感なお母ちゃんですが、鼻炎・喘息・蕁麻疹とアレルギー持ちで、薬を服用し誘因物を極力避けて身体を維持しています。
それでもやっぱりだめな時もあり、ダイジョウブと前向きな気持ちでベッドに入っても、明け方自分の脆瞑を感じながら膝を抱え朝を迎えることもあります。
テレビにバカな突っ込みを入れて笑っても、コンビニで一番高いエスプレッソを飲んでも、身体の方がストレスに正直。
そんな時いつも思い浮かぶのは、私が多感なお年頃だった時の若かりしばあば。殆ど母業をしたことが…というか、私の弁当、後半は夕飯すら作らなかったくせに何言ってんのさ笑っちゃうぜ。
その頃は日本舞踊の師匠として散々多忙感を振りまいていたけれど、仮に現在の私と同じ労働量だとしても炊事はできたと思うな。
久しぶりの5時帰宅にもきゃあは「あ、帰ったの」と一瞬確認してまたパトロール業務。私に甘えるのはご飯かっきり一時間前からです。
不意を突いて無理やり抱き寄せ「お前は偉いね〜」と合わせない目を無理やり覗き込みました。
猫って我が道を行く孤高の生き物だなぁとつくづく思います。例え家猫でも媚びず阿ず、でも仇なさず。
6LDKの縄張りの中で、人から強いられることがありながらも、なんとか折り合いをつけ、自分の道を極力守るきゃあ。
寝がえりで毛布から落とされても次の寝場所を探す。ご飯の時間に誰も帰宅せずとも黙って玄関を見つめる。自分が遊びたければ問題集の上でじっと待つ。
ある日きゃあが、ばあばの鼻先を引っ掻きました。聴けば衣類の段ボール箱の整理を始めた時、きゃあの業務を拒んだそうな。家中の家具は勿論のこと、新しい新聞がソファーに置かれただけでも「確認」するのが猫。ちょっと我慢して受け入れておけば、おイタもせず出て行ったのですが…。
「オレの仕事になにすんの」と思わず爪を立てたのでしょう。知らない人だと番犬の様に「なあお」と鳴いて、その人のパーソナルエリアには絶対近づかないし、そこはまぁ傍に来るようになったと喜んでください。
きゃあのかみかみと引っ掻きの洗礼は家族全員受けているのです。
…とは言えちょっと小気味よい。
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