私には発達障害を持つ二人の子供がいます。
長男はアスペルガー症候群、次男は知的障害ともなう自閉症です。長男は知的障害がなく、言葉の遅れもないため誤解されやすく、またこだわりが異常に強いため、トラブルを起こしては、その度に学校から電話がかかってきていました。数えきれないほど多く、相手方の親御さんに謝罪するたび頭の痛い思いをしてきました。精神的にも追いつめられ、どれほど自殺を考えたことでしょう。
はたからみれば長男は成績はトップで物おじせず、知らない人にも堂々と話しかけていくので、障害があるようにはみえません。しかし、ひとたびカッとなると我を忘れて激高し、やられたらやり返さないと気が済まない性分の持ち主です。
担任やスクールカウンセラー、地元の機関に相談し、専門の病院にたどりついたときにはアスペルガー症候群といった診断が下されました。
こだわりはさまざまなところにあらわれますが、長男はたくさんのルールを作って生活しています。
「テレビのスイッチを消すときは必ず3チャンネルにしてから」
「ボタンのついた服は着ない」
「朝食はフレンチトースト」
等々客観的にみれば面白い物ばかりですが、これらにつきあわされる家族はひとたまりもありません。なにせ融通がきかないのですから。ルールから外れると大変な違和感を持つそうです。
こうした特性がよくわからない人たちからは決まって親のしつけが悪いといわれます。しかし、診断をした医師によると、生まれつきの脳の機能障害なので、親の育て方とは関係がないそうです。
長男は想像力が乏しいため、
「今こんなことをしたら他人は困るだろうな」ということがわからず、基本的な対人能力がついていません。また、注意力も欠如しているため、同じことを何度も注意されます。私自身、何度言っても言うことをきかない長男に腹を立て、バカにされているのかとも思ったりもしましたが、単に忘れるのが早いということがわかったのでした。
基本的な生活習慣が身に付いていないため、放っておくと歯磨きもお風呂も忘れたまま寝てしまいます。いい加減自分のことは自分でして欲しいのですが、それもかなわず、声をかけながら、一つ一つ確実にできるようにしています。
次男は来年学校に上がる予定ですが、言葉の発達が遅く、2歳程度の言語能力しかありません。長男同様こだわりが強く、特に道順に関しては、一度通ったことのある道ならスッと頭に入ってしまうようで、大人なら30分かかる距離でも間違えることはありません。方向音痴の私としては助けられることもあります。自閉症特有の症状だそうです。
偏食も強く、特定の物しか食べません。よく、食べさせないからダメなんだ、いろいろな物を食べさせなさいといわれますが、それができれば苦労しません。
長男も幼稚園の頃は私が作った物以外は食べないと言ったこだわりがみられましたが、学校に行くようになってからなおってきました。
しかし、次男の場合はそう簡単にはいきません。言葉の理解が困難であるため、いいきかせができないのです。今でも彼の理解を超えてしまう話をしなければならないときは絵カードや写真、マカトン手話を使って説明しています。
触覚が鋭敏で人と手をつなぐことができず、これ以外にも洋式トイレに座れず脱糞が続いています。せめて排泄だけでも自立してくれたら助かるのですが。朝から晩まで一日中大便で汚れたパンツを洗っていると、心がすさんでくるのを感じます。
家の食器もどれだけ割られたことでしょう。ベランダから物を投げ、奇声を発し、走り回る騒音でどれだけ近所に迷惑をかけたか知れません。今もマンションの管理人さんには謝罪を繰り返しています。
この子たちを育ててよかったこともありました。
特に次男は周りの人たちに恵まれているということ。長男の障害に理解を示してくださる先生たちにも感謝しています。主人や実家の両親よりもずっと熱心です。皮肉です。
結局この子たちは大事なことを私に教えるためにここに生まれてきたんだろうとも思えるようになりました。
障害者の世界をまだほんの一部ですが勉強できたわけですから。こうした人たちを取り巻く世間の冷たさや温かさ。当たり前だと思っていたことが実はそうではなかったということも。まだ戦争は続きますが、少しでも前に進めるようにしていきたいと思います。
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